古湯を故郷に持つ写真家 小池英文さんと、小池さんの写真が縁となりつながった大隈さん。暁とも縁が深い佐賀出身のお二人が、二人展「がばい家族」を開催します。
二人の家族、そして佐賀の情景を通じて、自分自身のあり様や家族・故郷に対する想いが交差していく。そんなあたたかい時間と空間になればと思っています。
会場は暁ほか古湯温泉街の3店舗にて、観覧は無料です。たくさんのご来場をお待ちしております。
(以下、小池英文さんのステートメントを引用)
『がばい家族 父の渓流にて』
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佐賀県の山間に開けた古湯温泉で父は生まれた。
昭和7年のことだ。
当時は村の中心を貫く渓流で遊ぶのが父の日課だったという。
やがて高校を卒業し上京すると、父は明治大学の夜間部に通いながら九州製糖株式会社に入社する。時あたかも高度経済成長の入口。右肩上がりの時代の中で、父も朝から晩まで働く「モーレツ社員」だったのを幼心に思い出す。
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それからどれくらい月日が流れたのだろう。
あれは三年前のことだろうか、晩年の父を車の助手席に乗せて丸の内界隈を走っていたときのことだ。目の前に立ち並ぶ壁のようなビル群を眺めながら、この大都市を父たちは築き上げてきたのだなぁ、という感慨がふっと胸の底から湧いてきた。
あの渓流の響きに包まれた美しい村を遠く離れて。
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いまは廃校になってしまった古湯小学校の教室の窓越しに、父はこの都市風景を夢想することができただろうか。青々と折り重なる山並みの向こうに、どのような幸せの形をあの頃思い描いていたのだろうか。
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いま、彼の孫にあたるぼくの子供たちが、毎夏その渓流で遊ぶようになった。
水しぶきを上げて遊ぶ子供らの姿を眺めていると、東京に生まれ育った彼らの目に、この祖父の故郷はどう映っているのだろうか、と思うことがあった。
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父と子供たち。
それぞれが思い描く幸せの形の向こうに、
ぼくらの来し方行く末をもう一度問いかけてみたい。
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そんなことを思っていた時、佐賀県出身の大隈さんと出会った。
東京で開催したぼくの写真展でたまたまお会いしたのがはじまりだった。話をするうちに、彼が古湯温泉に昨秋オープンした泊まれる図書館「暁」のオーナーと大学の同級生だということを知った。こんな奇遇が一体あるものだろうか。東京の新宿の写真展会場で、佐賀の山峡にひっそりと佇む古湯温泉を、それもぼくもオープンを楽しみにしていた「暁」を知る人間とピンポイントで偶然出会うなんて…。
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まるで何かに導かれるような思いに包まれながら、
このたび、大隈さんとともに二人展「がばい家族」を開催いたします。
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【写真展】
二人展『がばい家族』
◎会期・2017年9月16日[土]→10月9日[月・祝]
◎会場・古湯温泉の3会場にて(佐賀県佐賀市富士町古湯)
1) 古湯キッチン10 [営業]11:00-17:00 [休]不定休
2) coffee Slow [営業]11:00-22:00 [休]月・第1第3火曜
3) 泊まれる図書館 暁 [営業]12:00-15:00 [休]水曜・木曜
◎入場 ・ 無料
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小池 英文 Koike Hidefumi
写真家 東京都在住。
都立高校を一年間休学し米・カリフォルニア州に渡る。現地公立高校を卒業後、アメリカ全土を旅する。大学卒業後は海外取材を繰り返し、写真と記事を多くの新聞や雑誌に発表。近年は国内にも目を向け、今年の1月に写真集「瀬戸内家族」(冬青社)を出版。現在同名のフォトエッセイを産経新聞にて連載中。なお、雑誌「風の旅人」に掲載された写真が、「この写真がすごい / 大竹昭子編著」(朝日出版社)に選出されている。写真展に「生命のめぐる海辺」(新宿コニカミノルタプラザ)など多数。他の著書に「アジア風来坊」(ミリオン書房)などがある。
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大隈 亘 Okuma Wataru
写真愛好家。佐賀出身、関東在住。
見た人があたたかい気持ちになるような写真を撮ることを目指して、家族や街中の人々の写真を撮り続けている。
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